LITTLE MY STAR    「魔界天使ジブリールEPISODE2」 ジブリールアリエスことひかりちゃんを愛でるサイト

 「よろず屋 斧桜亭」の斧桜様より、再び素晴らしいショートストーリーを寄稿していただきました。今回も本当に素敵な作品です。本当にありがとうございました。
作:斧桜 様 



●けだるい午後(さくらさん)●

 ジーーーーーー
 セミが鳴いている。庭にある木からだろうか、ずいぶんと近い。
 ジーーーーーー
 その声に負けまいと、太陽も思いっきりがんばっている。
「にゃうぅ〜。暑いよぅ〜」
 自宅の居間で、さくらはだらしなく床に伸びている。ソファーの上よりも、床の方が冷たくて気持ちいい。
 自室でクーラーばかりにあたってちゃ駄目だ! と一念発起して一階に下りてきたのはいいものの、結果はごらんの通りだ。
「去年も暑かったけど、今年はまた特別暑いにゃ〜」
 ごろりごろりと転がる。肌のあたる部分の床が、すぐに暖かくなってしまうからだ。
 他人に見せられる姿じゃないが、暑さでほえほえの彼女には関係なかった。
 ごろん…と仰向けになり、そのまま見上げるように窓の外を見る。
 窓で仕切られたキャンバスの中は青一色だ。
 私がこの空を描いた画家なら、白い雲のひとつぐらい描き足すのになぁ。
 そんなことを思って、はふっと息を吐く。
 雲ひとつじゃ、暑さは変わらないかー。
 ごろん、ごろん。
 チリン……
 軒先の風鈴が小さく鳴った。途端にさくらの瞳は輝く。
「風だっ」
 ほぼ同時に、白いカーテンをオーロラのように揺らして風が吹き込んできた。
「わーい。すずし……うぷっ!」
 熱風だった。起き上がっていた彼女は、へなへなと床に崩れた。
 台所の方で新聞の落ちる音がした。風に吹かれたのだろう。
「あう〜。散らかっちゃったよ〜」
 精根尽きた、といった感じの声だ。さくらはのろのろと起き上がると、台所の床に広がった新聞や広告を拾う。
 と、ひとつの広告に目が止まった。
「……ふぅん。そうか」
 何かいいことでも載っていたのか、彼女はにこりと笑った。
 
〜おしまい〜(続けて、”ともよさん”をどうぞ)


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